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A4判 146ページ
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http://www.ipec-pub.co.jp/ipec/pdf/sample/osce_ot2_sample.pdf
本邦で作業療法士教育がはじまってすでに半世紀が経過し,この間の臨床技術は大きく発展してきたが養成期間は3 年~ 4 年間のままである.臨床では筋緊張反射を用いた神経筋障害部位の推定から,高度な機能画像を用いた診断に加え,詳細に計画された治療とその経過によって,神経内科学ひとつを例にしても,作業療法士が参考とすべき医学は膨大な知見を積み重ねてきた.今や学生が学修できるリハビリテーションに関する知識量は少なくとも10年前と比較しても明らかに増大している.
作業療法士教育の最重要科目のひとつである臨地実習は,これまで主に評価と検査の技術を修得する評価実習と,作業療法の評価から実施までを学ぶ臨床実習に大別されてきた.臨床での実習は学校内で学んだことを実地で応用して学修するわけだが,実地と学校とでは基礎と応用と単純に区別する以上に学生に要求される行動が違うことがほとんどである.このことは常に作業療法士教育上の課題として議論されてきた.
評価実習と臨床実習では,学生が学校で修得した知識とスキルを,実際の患者さんに提供する機会が与えられる.学生は,臨床指導者の指導・監督のもとで,担当患者さんの評価から問題点抽出,目標設定など,作業療法の実践の一連として,あるいはその一部を実施しながら学ぶ.学生が,臨床実習で担当させていただく患者に,少しでも円滑な関わりができることを目指し,学校では臨床の場面にできるだけ即した演習が行われる.本書はこうした作業療法の臨床技能の教育を担当する教員が,具体的な確認事項を示した教材として作成された.
ただし,本書は「評価実習」に挑む前の学修内容として編纂した.したがって,作業療法による介入の立案や実施までは演習できない.また,本書に例示した患者は,学校での演習で提示するために書かれた模擬患者であり,学生が理解しやすいようにモデル化されている.従って,臨床よりもはるかに単純化されていることを学生には予め断っておきたい.実際の患者は身体も心理も社会的背景も複雑で容易に理解できない深遠なものである.それでも本書をもとに患者を想像しながら学ぶことは,学生諸君に作業療法の知と技の「型」を備えさせるだろう.型のない武芸はない.ここでの学修も同じである.
医師および医学生の臨床能力(臨床実技)を客観的に評価するために開発された評価方法にObjectiveStructured Clinical Examination;OSCE(客観的臨床能力試験,通称オスキー)がある.本書は作業療法士の教育においてもこれを参考にし,学生の習得度を評価することとした.本書のOSCEは作業療法評価,特に,脳卒中片麻痺患者の評価に焦点を当てている.したがって,これに合格すれば,学生が評価実習に向けた準備が完了した,あるいは,評価実習を合格すると保証できるものではない.学生には近い将来に自らが臨床で活躍するために,本書と緊張感を懐に評価技能の練習を繰り返し行っていただきたい.
2021年8 月 執筆者代表
【登録情報】
2021年10月15日発売
ISBN 978-4-86415-109-2 C3047
NPO法人 理学療法・作業療法共用試験機構 監修